GSK
銀座の夜バナー   GSK緑化運動   GINZA Official  
           
GSKとは? | 協会案内 | 協会沿革 | GSK便り | 知得アラカルト | 賛助会 | 情報リンク | ご意見ご要望
 トップページ > 知得アラカルト > 亀島延昌のちょっと一服

亀島延昌のちょっと一服

 
 

カウンターからタンゴの世界へ vol.15

○バンドネオン奏者たちとタンゴ歌手
 現在のタンゴ演奏に欠かせない楽器バンドネオン。一見アコーディオンのようですが違います。左右にボタンが沢山ついています。計70個以上。これらのボタンが沢山ついたパーツを蛇腹でつないでいます。そして蛇腹を開いたり閉じたりして空気を送り込み音を出すのですが、同じボタンを押しても開閉で違う音がでます。演奏者からはボタンは見えないので完全にブラインドタッチです。この厄介な楽器を有名にした1人としてタンゴ界の異端児『アストル ピアソラ(Astor Piazzolla1921〜 1992) 』がいます。ブエノスアイレスに生を受けニューヨークで育ち、パリで音楽の勉強をしたエリートはその秀逸な能力のせいか、タンゴそのものから逸脱していきます。当時は「これはタンゴではない」とか「こんな曲で踊れるか」などと酷評されましたが、今ではタンゴのコンサートで演奏されない方が稀なほど不動のアーティストとなりました。(私は今でもこの人の曲では踊れませんが)有名な曲として Livertango(後にヨーヨーマがチェロでカバー), Adios Noninoなどがあります。
 日本でも優秀なバンドネオニスタが沢山います。小松亮太、北村聡、平田耕治など。特に小松亮太さんは東京国際フォーラムを満員にするほど人気があります。そしてクラッシック界とのセッション、例えば葉加瀬太郎さんと組んだり川井郁子さんと組んだり一夜限りのコンサートなどもやっています。
 また最近ではGOTAN PROJECT(ゴタンプロジェクト)というフランス人プロデュースのバンドが人気を博しています。このグループの奏でるタンゴは最新機器を導入した重低音がズンズン響いてくる新しいタイプのタンゴで世界的なヒット曲を連発し、来日もしています。 特に2003年から6年間ヴォーカルを勤 めたフランス系アルゼンチン人、ベロニカ シルバ Veronika Silvaは秀逸なボーカリストでした。
 
○ベロニカ Veronika
 ある春の土曜日、私はゆっくりめの出勤をさせて頂くことができました。スタッフの繁田君が気を利かせてくれたのでした。夕方6時半ごろ、定食屋さんで鯖の塩焼きとご飯の大盛を頬張っていると携帯電話がなりました。着信は繁田からでした。
「おはようございます。」「おはよう、どうした?」「実は今、外国人が来店されましてどうも…。」「どうも何?」「ベロニカ シルバじゃないかと思うんですが…。」携帯を耳と肩に挟み、味噌汁に七味唐辛子を入れながらその言葉を聞いた私は、その瞬間一生分の七味をブッコンでしまいました。「すぐ戻ります!」
店に戻り、様子を伺うと4人組のお客様が奥のソファー席にいらしていました。ご挨拶として近くに行くと、紛れも無くベロニカが座っていました。ブエノスアイレスで練習したベッソ Beso(頬と頬を合わせる挨 拶) をしてお互いに自己紹介をしました。あれだけ上手く出来なかったベッソが今回は上手くいき、ビビアナに心で感謝をし、私はいかにベロニカのファンであるかを伝えました。しかし最後に間違えて"Te amo"(愛しているよ) と言ってしまいお連れ様がドン引きの中、ベロニカは笑いながら「そんなこと言われたら緊張してしまうわ」と流してくれました。翌日にコンサートを控えているという彼女は、1人で7時にはホテルに帰って行きました。残った3名様、私とスタッフの繁田は、まだここに座っているかのようにベロニカについて語り合いました。勧められてもいないのにワインを飲みながら…。