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亀島延昌のちょっと一服

 
 

カウンターからタンゴの世界へ vol.18

○バースデーミロンガに向けて
 アルゼンチンタンゴは何かの種目の一つではありません。これ自体がダンスそのものです。社交ダンスのそれとも違います。このアルゼンチンタンゴダンスには大きく2種類あります。まず日常的に行われている即興ダンス。アルゼンチンタンゴをやっている人は全員がこれをこなします。(当然上手い下手はありますが)世界共通のステップがいくつもあり、これをまず男女がそれぞれ習得しなければなりません。
 中級者ぐらいからこのステップといういわゆる「型」にとらわれなくなっていきます。上級者の男女が踊っている姿を見るともう何をやっているのだか、初級者が習ったステップを一つも使っていないように見えます。しかしこれは勘違いで基本ステップを組み合わせて進化させているのです。
 カルロス・ガビートというミロンゲーロがいました。ミロンゲーロというのは簡単に言うとタンゴダンスにおいての踊りの能力、人間性、ファッションなど周りの人達から尊敬される男のことを指します。このガビートのダンスはすごいものでした。
 ホール隅で女性と組んでから30秒ほどピクリとも動きません。周りのカップルはガビートを追い越してホールを反時計回りに移動していきます。そしてついに大きく一歩だけ踏み出します。女性の方はスムースに反応します。また暫く動きません。
 また30秒後に一歩。そして徐々に激しく動いていき、リズムに乗り始めます。こんなこと普通出来ません。もし私が30秒静止していたら組んでいる女性に「どうしたんですか?お腹でも痛いんですか?」で終わりです。彼の著籍を読むとこう書いてあります。「よく私のダンスを止まっていると評する人がいるがこれは間違いである。流れている音楽に耳を傾け、相手の鼓動を感じ、互いの心でリズムを取り続けているのだ。」という感じのようなことだそうです。(私的な解釈です)
 話が逸れましたが、もうひとつのタンゴダンスは決まった相手と打ち合わせをして決めたステップを踊るスタイルがあります。つまり見せるタンゴです。これに挑戦しようとしている人が私の周りに1人いました。いつも私を陰で支えてくれている長身の男性です。アルゼンチン大使館の職員リタとの出会い、ブエノスアイレスのビビアナ、コスプレサンタの麻美と智子など皆この男性を介して友人になりました。
 そしてこの度、この男性の誕生日会ミロンガを催すことになり、主役である彼は来客者へのお返しにタンゴダンスを披露することにしたようでした。ただし、よくあるプロのダンサーと生徒という関係ではなく振り付け、ステップはすべて本人が考えるというものでした。
 長身の男性はまず誰をパートナーに指名するか悩みました。そして選んだ女性は麻美。そう、例のコスプレの大好きな、ミニスカサンタクロースに扮して私の店に来店したこともある女性です。タンゴは初心者ですが身体8割、頭2割でステップを習得していくため、どんどん身体に馴染んでいくようです。普通の初心者は、頭で考えて暗記してからステップを踏みます。しかし彼女は初心者にもかかわらず上級者のように身体が勝手に反応していくのです。このセンスを長身の男性は見逃さなかったわけです。
 こうして2人のステージタンゴのトレーニングが始まりました。