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亀島延昌のちょっと一服

 
 

カウンターからタンゴの世界へ vol.19

○悩める紳士と気まぐれ娘
 自身の誕生日に招待した客をもてなす為にTANGOのデモンストレーションをすることに決めた長身の男性は、パートナーとして麻美を選びました。彼女のダンスのセンスは抜群でどこのミロンガ(ダンスホール)に行ってもモテモテでした。男性のリードに素直に反応し、アマチュアの男性陣にとって本当に踊りやすかったのです。もっともこれは即興ダンスの話ですが…。
 つまり今回は勝手が違うのです。パフォーマンスとしてのTANGO。お互いが打ち合わせをして決めたステップをお客に見せるのです。
 麻美はステップの8割を身体で感じ取っていました。頭は2割。いつもはそれで問題ないのですが、今回はショータンゴですのでステップを暗記しなければなりません。しかし彼女は長身の男性が考えたステップの組み合わせをなかなか覚えてくれませんでした。
 長身の男性は東京大学法学部をストレートで卒業した秀才で頭9割。ステップの連続技を見事に組み立てました。それを麻美に伝えます。そしていよいよ小さなスタジオを借りて練習を始めました。「その調子だ麻美、そのままヒーロだ」「え?ヒーロって何?」「いつもやってるだろ誰よりも綺麗に!回転するこれだよ!」と長身の男性は麻美をリードして見せた。
 すると麻美は「あ〜これね、ヒーロって言うんだ、スーパーヒーローみたい。アハハ」「…」「さあここから後退のオチョだよ」「なになに?」「8の字を書くように歩く、これだよ」「あ〜知ってる」
 長身の男性は困りました。毎日練習が出来るような環境ではない。麻美も仕事があるし2人が一緒に練習できるのは当日まで数回しかない。次に合うまでにステップを記憶しておいてもらわないと困る…!

○苦肉の策
 麻美との練習を不完全燃焼のまま終えた長身の男性は失意のもとに私のお店にみえました。カウンターの隅っこにちょこんと座ると彼はこう切り出しました。「どうしたもんかな、次に彼女に会うまでに私が組み立てたステップを伝えておきたいんですが…」
 私も彼と一緒に悩みました。長身の男性は頭脳明晰。一方私は勉強や宿題もろくにせず大人になってしまった・・・。こんな私が下手くそながらもタンゴのステップを覚えていった…。始めたばかりの頃を思い出す…。「1つ案があります」私は一計を案じました。それはステップを正式名称ではなく擬音で覚えるのです。私がTANGOを始めたばかりの頃、先生はステップを名前で言うのではなく、長嶋茂雄さんのように「バッ」とか「ダッ」とか言って教えてくれました。それを今回適用してみようと考えたのです。
 そして私は長身の男性からステップが書かれたノートを拝見すると…。ガンチョ(自分の膝から下をポンと蹴り上げる)、アラステ(自分の靴を相手の靴にあて、すりあしで送り出す)カスティカーダ(自分の後ろに足を蹴り上げる)、ラピス(相手を軸に自分が周りを1週する)などなど。ここに思い切ってこう書き込みました。
 〜麻美へ、この順番で踊るように〜
 キン蹴り→スリスリ→イチジク浣腸→ぴよぴよ→あっハン→くるりブーなどなど。
 このノートを互いに確認しあいながら次回練習してみてはどうかと。長身の男性はやってみますと言い、カウンターから席を立っていきました。さて、当日が楽しみです。