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亀島延昌のちょっと一服

 
 

カウンターからタンゴの世界へ vol.21

○ミロンガの後に
 タンゴのダンスを楽しむ為に集うこと、または曲のテンポなどのことをミロンガといいます。人によっては踊りまくってハイさようなら。という人もいますが私にとってのミロンガは音楽を聴き、時には踊り、何よりもお酒を呑みに行きます(笑)。会場に着くと必ずワインを飲みます。そしてゆっくりします。踊りはあまり得意ではないのでそこにいる人達を”人間ウォッチング”しながら飲んでいます。まさにミロンガの置き物です。そこへ長身の男性が現れました。3人の女性を引き連れて…。頭8割りの智子、身体8割の麻美、そしてギリシャ人のレダでした。初心者のレダはさておき、麻美と智子はかなりの進歩をみせていてもはやアマチュアダンサーとしては申し分ないでしょう。彼らは私が座っている席に寄ってきました。そして長身の男性がミロンガの主催者に注文をしました。「赤ワインをボトルで。」すると相手は「あ、グラスしかやってないんですよね。」長身の男性は言いました。「別にポリタンクから注いでるわけではないんだろ?そこにあるボトルを出してくれれば良いじゃないか。」「あ、そうですね。ちょっと聞いてみます。」こんなやり取りを見てぁw)EUR「ると、う〜ん、お酒を呑む人は少ないんだなぁ・・・。と感じました。
 さて、グラスも空きそろそろ踊りますかということでまずは頭8割の智子と踊りました。私が仕掛けたステップに対して考えながら反応する。しかし的確に対応してくる。いつも明るく、誰よりも人気の彼女は実は堅実で頭の良い人なんだろう…。そして身体8割の麻美と踊る。私が仕掛けたステップを先読みして軽やかに動く。しなやかでやわらかい。いつも智子の半歩後ろにいる彼女は智子の繊細さを身体で感じ取っているのだろう。いずれにしても私より後からタンゴを始めたはずの二人に対して、私はいつの間にか胸を借りる格好になっていました。そしてレダと踊りました。前に始めて踊った時と同様、二人の距離は縮まらない。一体感が無い。初心者同士の二人は操り人形のようでした。
 日本のミロンガは朝まではやりません。会場の問題やら色々あるのでしょう。そろそろお開きとなるとアスリートダンサーたちはそそくさと帰っていきます。しかし我々はこれからが本番です!のん兵衛の私たち5人はどこかに呑みに行くことにしました。智子の口癖は「お腹空いた〜」でした。実は繊細な彼女はこういうキャラクターを示すのです。それに麻美はひょうひょうと付いていきます。それでは、と行ったのは銀座にあるスペイン料理のお店でした。ガスパチョ(トマトスープ)やガンバス(小エビのにんにく炒め)ボケロネス(いわしの酢漬け)をつまみにリベラデルデュエロやリオハワインを今度はボトルで(笑)ガブガブ呑みました。そんな時、レダが私に言いました。「ノブサン、私大学であまり親友がいません。だから分かりません、友達同士で使う汚い言葉を教えて下さい。」う〜ん、これには困りました。周りの皆を見渡すと酔ってきている様でレダの質問は誰も聞いていません。それぞれが好き勝手なことを話していました。何も思いつかないので私は言いました。「レダ、耳を貸してごらん。汚い言葉は誰にも聞かれたくないからね。」彼女は興味津々、私にそっと耳を傾けました。私はこんなことを言いました。「君の笑顔が好きだよ。」レダははにかんで「ありがとう。」と言いました。パエリヤを食べ、パチャラン(アニスの食後酒)で乾杯し、お店を後にした私たちはそれぞれ帰宅のとにつくことにしました。「じゃ、みんなまた。」長身の男性が言うと皆が手を上げてそれぞれの方へ足を向けました。すると「私、ノブサンとまだ呑みます。」と誰かが言いました。それはレダでした。皆が一瞬固まりました。レダは小走りで私のほうへ寄って来ました。皆はそれを見なかったことにして去っていきました。2人きり銀座4丁目の交差点に立っている二人はどうなるのでしょうか。続きはまた。