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亀島延昌のちょっと一服

 
 

カウンターからタンゴの世界へ vol.16

○アルゼンチン大使館
 それは港区の広尾辺り、仙台坂上にある立派な建物です。ここでしばしばアルゼンチンワインのテイスティングセミナーなどを行っています。アルゼンチンのワインは日本ではあまり馴染みが無いかもしれませんが、かなりのワイン大国です。年間生産量は世界5位(2006年統計)、一人当たりの消費量も年間40リットル(日本は2.5リットル)もあります。日本ではお隣のチリの方が有名ですが、規模はアルゼンチンがケタ違いに大きいです。 
 話が逸れましたが私はこのワインセミナーに参加すべく、大使館に向かいました。こ こには私のタンゴ人生にかかせない人達の一人がいます。リタという女性職員で、日本人の父親とアルゼンチン人の母親を持ちブエノスアイレスに生まれ育ち、大学生になってから日本に在住。そして5、6年が経過しているようでした。
 顔立ちは完全にアルゼンチン顔(欧風?)だが日本語は流暢すぎる。もしこんな人に突然日本語で道を訊かれたら戸惑うだろうなというぐらい顔と日本語の上手さがベストマッチしている。思えばこの女性が日本人の長身の男性と2人で私のお店に来店されたことが事の始まりでした。「この顔に似合うワインを出してください」と注文され、どうしようかと考えている時、隣の長身の男性とタンゴの話をしていたので私はアルゼンチンワインを提供しました。そのワインを見てリタは「流石ね、良く私がアルゼンティーナだって分かったわね」と言いましたが、そりゃ分かりますよ、とは言えませんでした。そしてタンゴのダンスを覚え、長身の男性 の元秘書、ビビアナにブエノスアイレスを案内してもらい、少しずつタンゴを覚えて来ました。そんなことを考えながら大使館に到着、フロントで名刺を渡し3階の大広間に行くとズラリとワイナリーのブースが並んでいました。数々のワインをテイスティングし、アルゼンチンワインのメイン葡萄、白のトロンテス(爽やかな甘口 )や赤のマルベック(果実身豊かなミディアムヘビー)を楽しんでいると、「Hola!!」と声がしました。リタでした。
 
○リタとの別れ
 その少し離れたところで長身の男性が数人の人達と談笑していました。感の良い彼はすぐに私たちの視線に気づき、こちらへ来ました。「おっ、これはお揃いで」「久しぶりですね」
 リタと長身の男性はBeso(頬と頬を合わせるキス)を交わし、話し始める彼を制しこう言いました。 「二人が揃っているしちょうど良いわ」「どうしたの?」「実は私・・・ブエノスに帰ることにしたの」「え?どうして」「日本に疲れちゃったかも」
この二人の会話に私は口が挟めませんでしたが、衝撃を受けました。彼女とは色々な思い出があったからです。昼下がりの広尾公園でスペイン語を教えてもらったり、一緒にミロンガへ行ったり、銀座でワインを飲んでカラオケを歌ったりと…。
長身の男性は冷静に尋ねました。「いつまで日本に?」「今月まで」「あと10日かぁ」
彼女は続けました。「2人には残りの10日間、私が行ってみたいところを案内してもらうからね」と言われ、私と長身の男性は顔を見合わせました。          〜続きはまた〜