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借家契約を更新する合意をしないとどうなるのか  弁護士:奈良 道博

質問
 この度、私が借りている建物の賃貸期間の満了が迫り、家主から更新契約書が送られてきたのですが、もしこのまま更新契約書を交わさず賃貸期間が満了すれば一体どうなるのでしょうか?

回答
 結論から言うと、合意による賃貸借契約の更新(合意更新)がされなくても、原則として、直ちに建物を明け渡す必要はありません。皆様の賃借権(借家権)は、借地借家法(及び旧借家法)によって手厚く保護されており、期間満了の際に家主に更新を拒絶する「正当の事由」がない場合には、賃貸借契約は、それまでと同一の条件で更新したものとみなされることになるからです(法定更新)。
 ただし、このような法定更新により賃貸借契約が更新された場合には、更新後の賃貸借契約は、期間の定めがないものとなります。したがって、家主は、いつでも賃貸借の解約の申入れをすることが可能となりますが、この家主からの解約申入れについても、更新拒絶と同様の「正当の事由」が必要となりますので、「正当の事由」(家主と賃借人それぞれの建物使用の必要性を比較するなどしてその有無が判断されます。)が発生するまでは、建物を明け渡さなければならなくなることはありません。
 なお、法定更新の場合に、賃貸借契約書に規定されている更新料の支払が必要となるかについては、賃貸借契約書における規定の仕方などにより、裁判においても結論が分かれています。詳しくは、専門家にご相談されることをお勧めします。
 以上のとおり、建物賃貸借における賃借権は手厚く保護されており、たとえ合意による更新が成立しなくても、原則として、直ちに建物を明け渡す必要はありません。ただし、建物賃貸借の中でも、特に更新がないことを規定した定期建物賃貸借については、期間満了により、賃貸借契約は当然に終了することとなりますので、再度賃貸借契約を締結し直さない限り、期間満了により建物を明け渡さなければなりません。したがって、定期建物賃貸借契約か否かでは非常に大きな違いがありますので、賃貸借契約の更新に際して定期建物賃貸借への切り替えを求められたときには、慎重に対応を検討する必要があります。