家を増築することにしたのですが、基礎工事のために増築部分を掘ったところ、私の敷地内に隣の家の楓の木の根が張っていることがわかりました。楓の木の枝も私の家の敷地内に張り出しており、落ち葉の清掃が大変なので、この際、枝も根も切ってしまいたいのですが、問題ないでしょうか。
本件質問に対しては、物の本で、竹木の根は自由に切除してもよいが、枝は勝手に切除してはいけない、との記載をよく見かけます。しかし、竹木の根や枝の切除には注意しなければならない点がいくつかあります。今回は、竹木の根の切除について説明します。
民法上は、竹木の根が境界を越える場合、隣地土地所有者はその根を切除することができる、とされています。
ただし、根が境界を越えているからといって好き勝手に切除してよいわけではなく、切除することが権利の濫用に当たり許されないこともあります。権利の濫用に当たるのに勝手に根を切除した結果、その竹木を枯らしてしまった場合には、竹木所有者から損害賠償請求されるおそれがありますので相当の注意が必要です。
権利の濫用に当たるかどうかは、社会通念に照らし、根を切除することにより竹木所有者に生じる不利益と根が越境していることにより隣地土地所有者の被る不利益とを比較して判断することになります。
本件では、増築のため根を切除する必要があるとのことですが、根を切除せずに増築をすることができないのか、根を切除した場合にその竹木が枯れるおそれがどの程度あるのか等様々な事情を検討する必要があります。
竹木の根を切除しなければ増築をすることができないとしても、根を切除することでその竹木が枯れるおそれがある場合には、まずは、植替えの機会を与えるなど事前に竹木所有者と交渉してください。なお、切除した竹木の根は切除した隣地土地所有者の所有となると解されていますが、まず竹木の所有者に返還を申し出て、所有者に不要だと言われた場合に処分等をしたほうが安心です。
次回は、枝の切除について説明します。
|