売掛金を支払ってくれないお客がいて困っています。民事調停という手続きが利用できると聞きましたが、どのような手続きか教えて下さい。
7月号(vol1.97)では、売掛金回収において利用できる手続きとして支払督促をご紹介しました。今回は、民事調停をご紹介します。
民事調停は、当事者同士の合意によって紛争を解決することを目的とする手続きで、売掛金回収に限らず幅広く利用することができます。裁判所に申し立てを行い、裁判官1名と調停委員2名の仲介のもとで合意解決を目指します。
民事調停の特徴は、まず、相手方との合意に基づいて紛争を解決する手続きであることです。調停が成立すれば、双方納得した解決となりますから、相手方が任意 に売掛金を支払ってくれる可能性が高まるといえます。民事訴訟でも和解という合意解決の手続きがありますが、民事訴訟を提起するのと民事調停を申し立てる のでは、相手方の受ける印象が違い、その後の話し合いの成否にも影響します。
その他、民事裁判に比べて手数料が安く、一般的に解決までの期間が短いほか、民事調停は非公開ですので、原則として公開の法廷で行われる民事訴訟とは異なり、相手方と紛争になっていることを他人に知られずにすみ、また、自分で手続きを行いやすいというメリットもあります。
他方で、民事調停は、話し合いにより紛争を解決する手続きですので、相手方が、話し合いを拒否したり、そもそも呼び出しに応じなければ調停は不成立となってしまいます。そのため、民事調停を申し立てる際には、相手方に話し合う気があるかどうか、調停の場で合意解決できる可能性があるかどうかを慎重に検討する必要があります。
これまで2号にわたって、比較的少額の売掛金回収に際して利用することが考えられる代表的な手続きをご紹介しました。どの手続きを選択するかによって、回収可能性は大きく左右されますし、ご紹介した以外に利用可能な手続きもありますので、手続きを自分で行う場合でも、効果的な手続きについて身近な専門家に相談しておくと安心です。
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