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法律相談

 
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共同相続人の1人による銀行預金の払い戻し
半蔵門総合法律事務所 弁護士  亀井 俊裕

質問
 先日、私の父が死亡しました。遺産を整理していたところ、残高300万円の預金通帳が出てきました。父は遺言を残しておらず、子は私を含めて3人で、3人とも存命であり、母は父より先に死亡しています。まだ遺産分割は済んでいませんが、私がこの通帳を銀行に持っていけば、払い戻しを受けることができるのでしょうか。

回答
 銀行預金は、法律的にいうと、口座名義人が銀行に対して持っている債権(預金債権)と把握されます。
 そして、今回のように相続人が複数いる場合、相続財産は相続人全員の共有となるため(民法898条)、遺産分割の手続きを経てはじめてそれぞれの相続人の物になるのが原則です。しかし、預金債権については、遺産分割の手続きを待つまでもなく、法律上当然に相続分にしたがって分割される、というのが判例です(最判昭和29年4月8日民集8巻4号819頁)。
 今回の質問の場合、相続人が兄弟3人ですので、一般的なケースであれば、3人がそれぞれ預金債権のうち3分の1ずつ、つまり100万円ずつの預金債権をすでに取得していることになりますから、質問者の場合も、100万円の範囲であれば自分1人で払い戻しを受けられてもよさそうです。
 しかし実際には、ほとんどの銀行は払い戻しに応じてくれません。その理由は、相続分を超えた支払いをしてしまうリスクや、相続人間の遺産をめぐる紛争に巻き込まれるリスクを避けるためと言われています。法律的には自分の債権なのに、実際には払い戻しを受けられないのです。払い戻しを受けるためには、実務上相続人全員の同意が要求されています。
 以上の次第で、回答としては、質問者1人で払い戻しを受けることはできず、他の兄弟2人の同意を得てから払い戻しを請求することになります。
 なお、払い戻しを受ける前に、可能であれば預金のことも含めて遺産分割を行っておく方が安心です。遺産の分け方についてトラブルになることも少なくないので、実際に払い戻しを受ける際には、弁護士などの専門家に相談されることをお勧めします。