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法律相談

 
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インターネットのトラブルについて
半蔵門総合法律事務所 弁護士  長谷川 和哉

質問
 私は、飲食店Xを経営しているのですが、先日、Yが管理するグルメサイト(飲食店のユーザーがランキングや口コミ等の情報を共有・閲覧することができるサイト)に、Zというユーザーネームの方が、Xを誹謗中傷する内容の書き込みをしているのを見つけました。この書き込みに対し、何らかの対応をとることはできませんか。

回答
❶ インターネット上の書き込みであっても、その内容が他人の品性、名声等の人格的価値についての社会的評価を低下させる事実を摘示する表現である場合には、「名誉毀損」として、民法上の不法行為に該当する可能性があります(民法709条)。そして、Xは、名誉毀損に該当する表現行為に関して、グルメサイトを管理するY、実際に書き込みをしたZに対し、それぞれ不法行為に基づく損害賠償や名誉毀損に該当する表現の削除を求めることが可能です。もっとも、それぞれの請求については以下の点に注意が必要です。

❷ (Zに対する請求について)通常インターネットサイトでは匿名で投稿することが多いため、Xは、Zの氏名、住所等の連絡先を簡単に知ることができず、したがって、損害賠償請求をする相手方を特定できないという問題があります。
 そこで、このような場合には、グルメサイトの管理者やプロバイダ(個人がインターネットに接続する場合に契約するプロ
パイダ等のことです。)に対し、所謂「プロパイダ責任制限法」に基づき、書き込みをした者の「氏名、住所等」(プロパイダ
責任制限法では「発信者情報」と定義されています。)の開示を求め、損害賠償請求等の相手方を特定することが可能です(但し、開示されるまでに時間がかかりますので、迅速に発信者情報の開示を受けるため保全手続を活用することも多いところです)。

❸ (Yに対する請求について)Yがグルメサイトを管理する者に過ぎない(名誉毀損行為を直接行った者ではない)ことから、上記のZの責任に比べ、プロバイダ責任制限法等に基づき、Yは、損害賠償責任等が制限されています。例えば、Zの損害賠償責任は、プロバイダ責任制限法により、不法行為の要件に加えて、管理者が名誉毀損行為を防止する措置を講じることが技術的に可能であること等の要件を満たす場合に限り認められています。また、Zに対する書き込みの削除請求は、管理者が被害者からの具体的な削除請求を受けた後も不当に放置した場合等に限り認められています。

❹ そもそも名誉毀損に該当するか否かについては難しい判断を迫られることが多いところですが、名誉毀損に該当するのであれば、以上のような法的措置を講じることが可能です。なお、以上は特定の名誉毀損行為に対する法的措置を念頭に記載しましたが、札幌地裁平成26 年9月4日判決では、とある飲食店が「食べログ」というグルメサイトに関して、(名誉毀損に該当する表現だけでなく)この飲食店の全ての掲載ページを削除するよう求める請求について判決を下しています。当時、新聞にも掲載されていましたのでご存知の方も多いかもしれませんが、残念ながらこの請求は認められませんでした。しかし、これもあくまで一事例に過ぎませんので、今後の同様の裁判例が注目されるところです。