先日父が亡くなり不動産を相続したので売却しようとしたところ、30年以上も前に設定された抵当権の登記が残っていることが分かりました。当時の資料も残っておらず、抵当権者とも連絡が取れません。どうしたらよいでしょうか。
抵当権設定登記を抹消する場合には、原則として抵当権者と抵当権設定者(本件では相談者)が共同で申請する必要があります。抵当権設定者が単独で申請する方法もありますが、抵当権者が個人か法人かによって解決方法が異なります。
抵当権者が個人の場合には、まず抵当権者の現住所を調査して連絡を取ります。抵当権者の現住所が不明で連絡が取れない場合に、抵当権者が所在不明であるとして①裁判所に公示催告の申立てをし、除権決定を得て当該決定謄本を添付する、②債権を全額弁済した旨の領収証等を添付する、③債権を利息含めて供託する、3通りの方法のいずれかにより、単独で抹消登記の申請をすることができます。本件では②の資料がなく、③も債権額が多額であれば困難でしょうから、①の方法になりますが、数ヶ月の時間を要します。
抵当権者が法人の場合、法人の商業登記簿を調査します。法人の登記が既に閉鎖されて閉鎖登記簿謄本すら取ることができない場合、法人が個人の所在不明と同様の状況にあるとみなされ、前述の方法を執ることができます。
しかし、解散等により登記が閉鎖されていても閉鎖謄本を取ることができる場合、個人の所在不明と同様にはみなされません。残余財産の処分等のために清算人が選任されていれば、清算人と連絡をとり、抵当権の抹消登記に協力するよう依頼します。
ところが、このような法人では清算が行われていない場合がほとんどです。この場合は、裁判所に清算人の選任申立てを行い、選任された清算人に抹消登記への協力を依頼します。しかし、清算人が登記の抹消に協力してくれるかは分かりません。清算人の協力が得られない場合には、清算人が代表する当該法人に対して抵当権登記の抹消請求訴訟を提起し、債権が時効により消滅している等の主張を行って判決を取り当該判決に基づいて登記の抹消を行います。清算人の選任申立てを行わずに、最初から法人を相手に訴訟を提起し、当該訴訟の中で裁判所に法人の代理人を選任してもらう方法もありますので、専門家と相談の上でより良い方法を選択してください。
|